「存在しない景勝地」プロジェクト
台北から電車で東に2時間ほどの、台湾・宜蘭県での現地滞在リサーチを通してアートブックの発行とシルクスクリーン版画作品の制作を計画しています。初の長期海外滞在プロジェクトになり、1ヶ月半のアーティスト・イン・レジデンス滞在プログラム「SurfySpace」で実験を行い、日本と台湾のデザイン・アートの新たな交流を継続的に生み出すことを目的としています。
実験①
色を変えると見え方が変わる
滞在先近くの外澳で岩肌を撮影し、その写真を青く色調補正をかけると岩肌の表情から架空の海洋景観が浮かび上がって見えてきます。岩の白い部分が白波に見立てられています。このように、滞在を通して岩肌をさまざまな角度で撮影し、まだ見ぬ景色を探すリサーチを行います。
実験②
シルクスクリーンで現像する
岩肌の写真のプリント手法を検討したら、シルクスクリーン版画(モノクロ)から非常に良いプリントが生まれることが分かりました。さらに偶然的にインクの目詰まりが霧の表現を生むことも明らかになりました。普段は掠れ・ムラは敬遠されますが、逆にノイズがその景色に天候の表情を与え、一枚とも同じ情景はないジェネラティブなプリントが仕上がります。
後半に行くほど、霧がかって見えてくる
実験③
アートブック化する
上記のリサーチの成果をアートブックにまとめます。上巻・下巻・リサーチドキュメントの三冊の小冊子から構成され、現地の岩肌のプリントから存在しない海景を可視化するプロセスを共有します。
①存在しない景勝地・上
上巻は実験①の内容をアートブック化したもので、デジタル画像編集で、岩肌を海に見立てたフォトブックとなります。これまでのgitaiシリーズの新刊としても発行します。
②存在しない景勝地・下
下巻は実験②のシルクスクリーン作品をアーカイブするアートブックとなります。これまでのものに加えて、滞在中に新たに撮影した写真から作品を現像し、それらをここに記録します。
③存在しない景勝地・リサーチドキュメント
二つの実験に関する記録・アーカイブをこの中に格納します。天候やアングルなどの撮影方法、地形や地質について、プリント手法についてなど、調べて明らかになったことを記録します。
RESEARCHES
リサーチは下記の3ステップで構成されます。
#01 地形のリサーチ
特徴的な外澳の岩肌の形成についての聞き取りリサーチを計画しています。蘭陽博物館のWebサイト内の国立宜蘭大学の講師・江協堂 氏の記事(外部リンク)によると、外澳の地質は堆積岩の硬い地層と柔らかい地層が交互に重なるケスタ地形で、岩肌の形成における主な要因だと考えられます。海岸上のこの地質があるため、波による浸食作用も関係がありそうです。現地で蘭陽博物館に行くとともに裏付けを取りたいと思っています。
#02 撮影リサーチ
単に岩肌をカメラで撮るだけでは海景の見立てが成立しません。それが成立する要素を、撮影しながら抽出したいと考えています。撮影時のレンズ・角度(アングル)・天候・トリミング・色調の項目を記録したいと考えています。
#03 プリントのリサーチ
シルクスクリーン版画(孔版印刷)を用いたプリント制作実験を行います。メッシュ状の版に孔(あな)を作り、孔の部分にだけインクを落として印刷する手法で、昔でいう「プリントゴッコ」でご存知の方もいるかもしれません(参考リンク)。Research2で撮影した写真から製版フィルムを作成し、様々な海景をプリントし考察を行います。
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